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葬儀費用は誰が負担する? 香典は誰がもらうもの?

葬儀費用 香典 アイキャッチ画像 相続財産調査

ご依頼者様からの質問でしばしばあるのが、香典の取り扱いについて及び葬儀費用の負担についてです。どちらもお金に関することなので、どう扱うか迷うこともあるでしょう。 また、どこから支出するかによって相続財産と関連してくることにもなります。

葬儀費用は誰が負担?

これを聞かれると正直困ります。法律では、誰が負担すべきものなのかの記述はありません。相続人の皆さんで話し合って決めてください、というのが基本になります。こう答えると、だいたいの方から「他の方はどうしてますか?」と聞かれます。そこで、今まで相続手続きをお手伝いしたなかで、実際に葬儀費用をどのように支払っていたか、いくつかの例をご紹介します。

パターン1.遺産から支出

葬儀費用のために、亡くなった方(被相続人)の預金をおろしたいというお話しはよくあります。

葬儀費用を賄うだけの遺産があれば、遺産で葬儀費用を支払うというケースはかなり多いように思います。今までにお手伝いした方々をみてもこのパターンが多数を占めると思います。相続人固有の財産から支出する必要がないので相続人が複数の場合でも不平等感がなく、相続人同士が話し合いのできる関係ならば、話し合いがまとまりやすいということもあるでしょう。

実際の流れとしては、被相続人の預金から直接葬儀費用支払うケースと、誰か(喪主になる方もしくは相続人全員で)が葬儀費用を先に立て替え、後日、遺産分割協議の際に、遺産の中から葬儀費用を清算し、残りの遺産を相続人で分割するケースのどちらかになると思います。

パターン2.遺族(相続人)が分担して支出

遺産に現金が少なく遺産からの支出が難しい場合だと、遺族(相続人全員または一部)がお金を出し合うパターンが多いように思います。このパターンの場合も、相続人全員が均等に負担するか、負担割合が異なるかは、皆様での話し合いの結果ということになるかと思います。

遺産がほぼ不動産のみの案件で、不動産を相続した相続人が葬儀費用も全額負担というケースもありました。そういう意味でも、葬儀費用だけでなく遺産も含めて、それらをどうするかという話し合いになってくるのかと思います。

このパターンでも、相続人が葬儀費用その他について話し合うことができる関係であることが前提です。

パターン3.遺族(喪主)が単独で支出

遺産から葬儀費用の支出が難しい場合で、相続人同士が仲が悪い場合、葬儀費用について話し合いがまとまらない場合もあります。このパターンの場合のほとんどが、喪主が全額支払ったという形になるように思います。喪主が納得のうえ全額支払った場合はそんなに問題にはなりませんが、多くの場合、喪主がしかたなく支払ったという形になりがちです。

  1. 親族が亡くなり、葬儀をしないわけにはいかないから葬儀社に依頼する。
  2. 葬儀後、喪主宛に葬儀社から請求がきて支払わないわけにはいかないから支払う。
  3. しかし、相続人で話し合いがまとまらない(話し合いができない)から、他の相続人は費用を支払ってくれない。
  4. 結果として葬儀費用は喪主が全額負担

という流れです。このパターンの場合、遺産分割協議も難航する可能性があります。喪主が葬儀費用の負担について、わだかまりがあるからです。そのため遺産分割協議で喪主に対して配慮のない分割案(全員平等になど)が示されると、分割協議がまとまらない可能性が大きくなります。

葬儀費用についての過去の判例は

過去の裁判判例をみると、それぞれの事案によって判断が変わってきますが、 最近のものだと、平成24年9月29日に名古屋高等裁判所の判決があります。

名古屋高裁判決の要旨
  1. 被相続人が生前に葬儀の契約をしていた場合、契約内容で決められた者が費用を負担する
  2. 相続人の間で費用負担について合意があった場合、合意内容どおり費用を負担する
  3. 上記二つにあてはまらないときは、喪主が費用を負担する。

現状、生前にご本人が自分の葬儀の契約するケースはそんなにないと思います。そのため、相続人の間で葬儀費用について話し合いができない、もしくは、話し合いがまとまらない場合、判例的にも喪主が葬儀費用を負担することになりそうです。

相続人間での話し合いは無理そうだが、相続人が公平に葬儀費用を負担するようにしたい場合には、被相続人が亡くなる前にどのような葬儀にしたいか、費用はどうするのかを相談しておいた方がいいでしょう。

香典とは何か

葬儀費用とあわせて、香典の取り扱いについてもよく聞かれます。そもそも香典とは何なんなのかというところから見ていきます。

香典とは

香典とは、お香やお花の代わりに、故人の霊前に供えるお金のことです。葬儀には色々とお金がかかるので、遺族の金銭的負担を助ける意味もあります。

香典は誰がもらう?

香典は遺族の金銭的負担を助けるためのもの、葬儀費用に充てるものであるため、葬儀の主催者(喪主)に渡されることになります。

香典の財産としての位置づけ

香典は「喪主に対する贈与」とされています。そのため、遺産分割協議の対象となる遺産には含まれません。また、「喪主に対する贈与」ですが贈与税はかかりません。

なかには、香典が遺産分割の対象でないことに納得がいかない方もおられます。ただ、遺産を「被相続人が亡くなったときに持っていた財産」と考えれば、香典は故人の死後に発生するものなので、遺産ではないことに納得頂けるかもしれません。

香典の取り扱いについて

香典は「喪主に対する贈与」とお話ししましたが、実際には葬儀費用をどうしたかによって、多少扱いが変わってくるようです。

葬儀費用を喪主が負担

相続人間でコミュニケーションが取れないなどの理由で、葬儀費用を喪主ひとりが負担した場合、香典に金銭的負担の軽減の意味があることからも、葬儀費用を負担した喪主が受け取るのが妥当ではないでしょうか。

葬儀費用を故人の遺産から支出

香典を葬儀費用に充てる

香典の遺族の金銭的な負担を助けるという意味合いからも、葬儀費用に充てる方が自然です。香典を葬儀費用に充てれば、故人の遺産からの支出が減るので、遺産分割協議の対象になる財産が多くなります。多くの方は香典を葬儀費用に充てているように思います

香典を喪主が受け取ったとき

葬儀費用を故人の遺産から支出したのに、香典を喪主が独り占めした場合は、揉め事の種になりそうです。故人の遺産から葬儀費用を支払ったのに、香典を喪主が受け取ってしまうと、喪主ひとりだけが得をしたような形になるので、人によっては何か言いたくなるでしょう。確かに、法的な扱いは「喪主に対する贈与」で、香典は喪主が受け取るものという考え方ですが、ここに現実のギャップが生まれてしまうのです。

大事なことは話し合い

「喪主への贈与」とされてはいますが、遺産分割協議の際に、葬儀費用と香典も含めて相続割合を考える方は多いと思います。喪主となった相続人があまりに香典に固執してしまうと、お互いの関係が悪くなり、遺産分割協議に影響が及んでしまうことも考えられます。

葬儀費用や香典の取り扱いでトラブル回避のための絶対的な方法はないように思います。だからこそ、これらをどう扱うか相続人の間で話し合うことが重要になってくるでしょう。

葬儀費用のときにも書きましたが、相続人同士で話し合いが難しい場合は、被相続人が亡くなる前に葬儀についてしっかり話し合っておくことが必要でしょう。